Thursday, September 03, 2015

東京五輪と日本の名誉

 東京5輪の準備に関して新東京国立競技場および五輪エンブレムを巡ってトラブルが連発している。前者について何時の間に建設費が2,500億円を超え、専門家や国民の多くから厳しく批判された結果、当該競技場のデザインを見直し、建設費を1,500億円という上限が設定された。後者はベルギー劇場のロゴを盗作した疑惑が持たれ、五輪組織委員会が 当該エンブレムの使用中止を決定する余儀をなくされた。

 競技場の建設費は当初予算が設定されたにもかかわらず、デザインの特徴性を実現させるため、次から次へとその難度が高まり、よって建設費が膨らませられたという。なぜ、費用対効果の観点からデザインを選定しなかったかに関して、選考委員会は「デザイン」の選定のみに責任を持ち、建設コストには選定基準に含まれなかったと説明した。費用が膨らむ原因はそもそもデザインにあると言われている。挙げ句の果てに安倍総理の決断でやり直しとなった。その顛末に関しても責任不明のままにやり直しの作業が始まった。監督官庁の長である下村博文文部科学大臣が五輪の担当局長を更迭したことで責任所在を明確にしたと弁明し、メディア等の関係者も納得された模様である。
 
 五輪エンブレムの盗作疑惑はメディアの報道によれば、当該エンブレムの製作過程にコピーの懸念が指摘され、修正を重ねて完成されたという。なぜ、盗作の懸念を持た時点でデザイナーを変更しなかったかという素朴の疑問を持つのは筆者だけではない。敢えて佐野研二郎氏を信じ、目出度く立派なエンブレムを採用した。その行為は「性善説」からであろう。しかしながら、国の名誉をかけて、世界が注目されているエンブレムは「盗作の創意」であると訴えかねないものを製作する段階に取りやめるべきである。そうは言っても当該エンブレムを採択・公表するまで把握できないと反論する関係者もいるかもしれない。それに対して、五輪組織委員回は一定の期間(例えば、30日間)にそのエンブレムを候補として世界に縦覧すれば良いだけのことである。それも敢えてしなかったのは五輪組織委員会の怠慢であると言わざるを得ない。結局、エンブレムが採択され、その後盗作疑惑として騒がせられ、ベルギー劇場によって訴えられ、さらに週刊誌やサイバースペースで佐野研二郎氏の他の作品でも「パクリ」があったと確認された。こうした状態の中で、五輪委員会はやっと佐野研二郎のエンブレムの使用中止と決定せざるを得なくなった。それは英断ではあるが、この事件の責任所在をまだ明らかにされていない。

 あいにくこの二つの出来事は非常に「日本的」の始末である。二つの事件は既に日本という国の名誉を毀損してしまった。1日も早くそれを回復させ、費用対効果を下に立派な新国立競技場を建設すると同時に、日本人の「創意」を尊敬する五輪のエンブレムを作ってもらいたい。



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