Wednesday, May 27, 2009

内閣府の「月例経済報告」は大本営発表となったか!?

最新のGDP速報(1次速報)は2009年1〜3月期は実質GDPが前期比4%減となり、年率に換算すれば15.2%減となった。それは戦後最悪のGDP 成長率となり、米国のサブプリム問題とあまり縁がなかった日本経済は、他の先進国と比べれば、世界経済危機による打撃が極めて大きい。

こうした状況の中で、内閣府は5月25日に「5月の月例経済報告」を発表した。当報告は「景気は、厳しい状況にあるものの、このところ悪化のテンポが穏やかになっている。。。。。」という景気基調の判断を示している。新聞各社の報道によれは、この景気基調判断は3年3か月ぶりに上方修正をしたものであるとのこと。正に明るいニューズである。

この上方修正の景気基調判断の材料は「平成20年度の補正予算の効果」、「輸出が下げ止まりつつある」、「生産が下げ止まりつつある」によるものが大きいと理解しよう。また、内閣府の「輸出下げ止まりつつある」の根拠は中国の景気刺激策効果の見られ、それによって、輸出関連企業の「生産が下げ止まりつつある」にあると思われる。

しかしながら、実態はそうなのか。第一に「平成20年度の補正予算」、そして「平成21年度の第一補正予算」の効果に関してエコノミストの間でも評価が異なっている。第二に中国の経済成長に対する過大評価という懸念である。

中国の経済成長率、とりわけ、世界経済危機への対応のために打ち出した景気対策による持ち直しの実態はおそらく中国当局(中央と地方)のみ知っている。ロンドン『エコノミスト』週刊誌の5月23〜29日号は、中国政府、いやより正確的にいえば、中国共産党は内情と国際社会に対する思惑(特に対米)の裡に当国のGDP統計を操作していると指摘している(p. 32p. 72)。実に、中国のエネルギー局は26日に2009年上半期の中国全国の電力消費量が前年同期に比べて減少する見通しを示した(5月27日、日経朝刊の報道)。

だとすれば、内閣府は今後の輸出、そして生産に対する期待が外れかねない。あるいは、もっと厄介なことに、内閣府は諸外国の経済状況や中国の統計数字の信憑性を吟味せず、与党・政府の衆院選挙対策の一環のため、「月例経済報告」は総合経済対策の効果が上向いているのを宣伝する「大本営発表」の手段となってしまう恐れがある。