Friday, August 20, 2010

管総理の選択

 民主党の小沢グループは小沢氏を党代表選に出馬するよう環境作りに励んでいる。彼らに政局を仰ぐ余裕があれば、経済再生のための政治に精力を注いでほしい。そういう政局しか関心を持たない議員達の行動を見ると、実に憤慨である。管総理もそれを同感してくれると思いたい。管総理は民主党の議員に対して一人でも党代表選に出馬するなら、党代表選の前に衆議院の解散・総選挙をちらつかせておけば、反管総理の議員達は現状維持の方がよいと思うようになる。

 国民は民主党に国の再生に託したが、鳩山前首相の優柔不断によってマニフェストに掲げている目標が大幅に乖離している他、自らの政治資金管理のいい加減さ、さらに小沢氏の政治とカネや旧態依然の政治行動等によって民主党に対する信頼は大きく揺らいだ。本来ならば、鳩山前首相は辞任にあたり、衆議院を解散して総選挙を実施することが望ましい。しかしながら、敢えて国民の信を問わないままに、菅直人は総理大臣に選ばれた。参議選で民主党は大幅に議席を失い、再び衆参両院のねじれ現象が起きている。メディアや民主党の多くの議員(とりわけ、小沢氏の子分ら)、さらに自民党は管総理が消費税の引き上げを選挙の看板にしたことを原因に国民からノーと突き付けられたと主張している。果たしてそうなのか、いやそれは一部の原因であり、鳩山氏と小沢氏に対する拒否反応ももう一つの大きな原因である。それでもなお小沢氏を党代表選に担ぎ出すのは如何なものか。

 管総理は国の政治にとってベストの選択は自らの決断で衆議院を解散し、総選挙を実施することである。それができないならば、セカンドベストの選択は民主党の議員に「カンイズム」という政治理念を実現するため、党代表選に挑戦させないよう、2年後の代表任期満了に民主党を率いて総選挙を臨むことである。

Tuesday, August 17, 2010

就職留年

 2011年3月末に約56万8000人の大学生が卒業される予定である。リーマンショック以降の世界経済不況、ならびに依然として国内の経済構造が転換できない状態に起因する有効需要の不足が続いている中で、来年の春に卒業する大学生は仕事に就かない者は約7万9000人と各メディアの集計で明らかになった。実際に大学院(修士や博士課程)の修了者をもカウントすれば、教育課程を終えて大学・大学院を出る人の数と仕事に就く目処が立たない人の数はもっと高いと思われる。実に深刻な問題である。

 そうした状況下で、文部科学省を中心に政府は就職が出来ない新卒予定者に対する支援を乗り出している。たとえば、就職留年の学生に授業料の一部を公的資金で補助したり、大学の卒業予定者の「エンポロイアビリティ(雇用可能能力)」を高めさせるため、就職活動を仲介・支援する大学のキャリアセンターに就活支援の専門家を配置する費用を補助したりする等がある。残念ながら、政府や大学側の対応策は就職率を高めさせることにあまり役に立たない。のみならず、国家財源の浪費をさえもたらしてしまう。実に、政府や大学側の支援策、あるいはこれから就職留年の対策は「エンポロイアビリティ(雇用可能能力)」を高めることにほぼ関係のないものである。その根拠は少なくとも以下の二つである。

 グローバル経済や国内の社会経済構造が既に変わっている中で、大学の教育内容は依然として供給側の論理で組み立てられている。如何に学生の素質を世の中が求められている人材に育成していくかよりも、大学の教授らが各自の研究成果は世間の実態と関係なく、学生に教え込む(または、紹介する)。さらに、大学のキャリアセンターは就職希望者に対して求人情報の提供とか、どこの企業に同大学を卒業したOB/OGを介して会社説明会に関する情報を提供する業務等のみに専念しているようである。そのプロセスに学生の能力や素質等からなる「エンポロイアビリティ(雇用可能能力)」と無関係の業務である。それは売り手側の商品の品質と無関係に買い手側に紹介して売買を成立させる例えである。

 企業は正規な従業員を多く雇えない理由は二つある。まず、有効需要が不足していること、または供給サイドが過剰であることによって雇用が増えない。もう一つの理由は新卒の初任給、そして彼らを採用した後の給与水準は限界労働生産性に合致していないことである。現に新卒の平均的な初任給は約18万~20万にあると思われ、それが企業にとって負担が高すぎる。にもかかわらず、卒業予定者はその認識を持っていない。売手と買手は非対称な認識という状態に陥っている。売手は賃金の下方硬直性という法則に固執しすぎである。初任給を大幅に(50%、8万~10万)引き避けない限り、労働力の買い手が現れない。また、政府は就職留年の授業料を補助するよりも、その財源を大幅な就任給が引き避けられた新規雇用者に対する補填に回した方が経済に取って効果的である。なぜならば、これらの新規雇用者の消費規模は就職留年者よりも大きく、有効需要の誘発に寄与することになるのである。

Monday, August 16, 2010

If David Cameron will say:

On August 10, 2010, Japanese Prime Minister Kan Naoto, like all his predecessors,apologized to South Korea for Japan's annexation of the country in August 1910. The Japanese colonial rule over South Korea lasted for 36 years, which ended in August 1945.

Similarly, with a wishful thinking, there are many people who wish to hear from the UK Prime Minister David Cameron to offering the following statement (adapted and modified from PM Kan Naoto's statement):

"This year is the 65th Anniversary of the end of the War World II in Asia and the Pacific region. Thus, this year marks a significant juncture for the United Kingdom and all its Commonwealth member countries in Asia such as Pakistan, India, Bangladesh, Sri Lanka, Myanmar, Malaysia, Singapore and others. Since our colonial rule in those countries from the mid-19th Century, people of that time were deprived of their basic rights, and their national pride was deeply scarred by the colonial rule which was imposed against their will under the colonial circumstances......................

I would like to face history with sincerity. I would like to have courage to squarely confront the facts of history and humility to accept them, as well as to be honest to reflect upon the errors of our own. Those who render pain tend to forget it while those who suffered cannot forget it easily. To the tremendous damage and sufferings that our colonial rule caused, and still continue to suffer from our colonial legacies in several of those Commonwealth countries, I express here my feelings of deep remorse and my heartfelt apology.

Guided by such understanding, ...............I will in all sincerity to undertake the assistance to many Indian, Sri Lankan, Burmese, Chinese and other ethnics, who have remained in another Commonwealth country as a result of forced labor during our colonial rule. I will transfer precious antiquities of British Museum, which were originated but confistigated from our Asia Commonwealth countries during our colonial rule...............

Our Asian Commonwealth countries have become the most important and closest nations for the UK now in this twenty-first century, sharing such values as democracy, freedom, and market economy. Our relationship is not confined to our bilateral relations, but rather it is a partnership where we cooperate and exercise leadership for the peace and prosperity of the world by encompassing a broad spectrum of agenda the international community, the growth and development of the world's economy, as well as issues of global scale such as nuclear disarmament, climate change, poverty and peace-building.

At this significant juncture of history, I strongly hope that our bond will become even more profound and solid between the UK and our Asian Commonwealth countries, and I declare my determination to make every ceaseless effort to open the future between our two nations."

Queen save the Prime Minister, salute and prayer!!

Friday, August 13, 2010

円高とメディア

 8月に入って円・ドル、そして円対主要通貨の為替レートは高くなってきた。それを受け、メディアが一段高くなった円は経済状況は更に悪化させ、特に輸出向きの企業にとっては国内外の側面からダブルパンチで食らわれていると報道している。たとえば、トヨタ自動車は対ドルの為替レートは1円高の場合利益が300億円減少するという例が良く引き出されている。しかし、経済学のイロハをさえ理解すれば、現実に円高がもたらした影響は必ずしもメディア報道の通りではない。

 第一に、為替レートの価値は物価と貿易量の要素を考慮に入れて評価しなければならない。つまり、物価と貿易量を反映した為替レートから円の真の価値を評価すべてである。物価と貿易量を加味した指標は実質実効為替レートと言う。円対ドルの実質実効為替レートは日銀が過去30年の推移をまとめており、円対ドルの実質実効為替レート指数を見れば、2005年は100とすれば、2010年7月現在それが98.36となった。つまり、円対ドルの為替レートは物価と貿易量を考慮に入れれば、決して円高になっていない。したがって、いまの円高と声高に叫ばれる根拠はなく、いまの円はむしろ2005年よりも価値が低い。

 第二に、日本の輸出はGDP比が約12%(約60兆円)であるに対して、輸入はGDP比が約10%(50兆円)である。さらに、製造業に占めるGDP比は約20%に過ぎず、その半分は輸出の付加価値に寄与していると考えてよい。実は輸出商品の中に全てトヨタ自動車のように完成品ではなく、多くは中間財であり、それらの中間財は海外の日本企業へ欧米等の多国籍企業に供給されている。アップル社はアイホンやアイパッドのような製品を作るために日本企業から中間部品を購入している。円高で代替部品が見つからない限り、アップル社としては他のコストを削減してもアイホンやアイパッドの製品を値上げさせないで販売が続いている。言い換えれば、必要がされる部品が日本国内で製造され、円高の影響はあるとすれば、それが末端の完成品の販売元にそれが転化され、日本国内の企業にとってさほど影響を及ぼさないはずである。こうしてみれば、円高の影響はメディア報道のように深刻ではないことを理解できよう。

 日本の不況は構造的なものであり、それが政治不全の状況によってさらに不況脱出の糸口が導かれない状況が続いている。円高は輸入にもってプラスな効果が大きく、海外旅行も安くなったりするように、この不況の中でも生活を豊かにさせることが十分可能である。にもかかわらず、メディアは日本の再生に国民に対して本質か建設的な言論を提示しないまま、毎日円高だ、政局だ等の極めてレベルの低い報道を作り出し続け、この国はメディアによって滅ぼさせかねない。

Friday, August 06, 2010

高齢者行方不明

 超高齢化社会になりつつある日本では、100歳を超えている高齢者は約4万人となっている。ここ数日間、メディアの報道によれば、行方不明となった100歳を超えた高齢者は各地で続々と判明され、産業新聞の調べによれば今日現在その数は既に71人となった。これまで、高齢化社会という社会状況の中で、行政部門においては日課のように届け等の書類を通じて100歳を越えた高齢者数を把握してきた。つまり、死亡届けや行方不明等の書類さえ出されていなければ、最後に提出した行政が求められている書類をもとに100歳を超えた高齢者数を集計しているので、その数の信憑性に誰も疑うこともなかったのであろう。しかしながら、その前提と異なるのは現実である。
 この問題が発端されてから各地の役所の担当者は異例の暑い日々に100歳を越えた高齢者の所在確認に追われており、大変のようである。警視庁の資料によれば、2009年度に家出人捜索願は81,644人であり、行方が判明できたのは79,936で、1,708人は行方不明となっているようである。極端に比べれば、その数は超高齢者の行方不明の数よりも遥かに高い(約2.1%対0.2%)。
 役人を弁護するつもりはないが、行方不明になった超高齢者は行政上の瑕疵が生じたとかの問題ではないように思う。むしろ、家族の絆が崩壊してしまった現在の社会によって生じたものである。家族とは何か、改めて超高齢化社会になる日本社会は家族の絆を真剣に取り戻さねばならないというまでもない。

Thursday, June 17, 2010

民間人の活用

鳩山前内閣の意向を引継いだ形で、菅首相は丹羽宇一朗氏を駐中国大使の任命、さらに高速道路会社5社の社長という要職に民間企業からの人材を充てることを正式に決定した。政府または国有企業の要職に民間企業での経験者を活用するのはアメリカやヨーロッパ諸国ではよく見られるので、菅内閣の決定に対して異論はない。

しかし、やはり人選のプロセスは必ずしも透明ではない処が気に掛かる。特に、官僚組織のはい抜きは専門的な能力が限界だとか、官僚OBの場合は天下りだとか、という理由のみで、民間人の抜擢を正当化する傾向に疑問をもつ。なぜならば、日本の民間企業に長く勤めた経験者を、外交や国有企業の経営などに就かしても能力の限界やミスマッチが生じる可能性でも生じない保証はないのである。仮に、そういう問題を考慮に入れたうえの判断であっても、任命権をもつ首相や大臣の恣意性が問われかねない。

恣意的な意向を極力に取り除くため、人選のプロセスを透明にする必要がある。アメリカの経験を参考にすれば、次のような対応によって人選プロセスの透明性を確保することができよう。

まず、有識者の代表から中立的な人選委員会を設置する。その委員会は政府または大臣が指名した候補者から最も適任する候補を選ぶ。国会は超党派の衆議議員からなる委員会を設置し、公開ヒヤリングを経て選ばれた候補者の適任性を確認し、そのプロセスをクリアした候補者のみ、首相に推薦して承諾の手続きを完了する、というような具体的なアプローチを早急に確立してほしい。

サッカーワールドカップと日中韓

南アフリカで行われている第19回FIFAワールドカップにはアジア地区から日本、韓国、北朝鮮が出場している。この3カ国の代表的な選手はJリーグで活躍している。日本を代表する選手を紹介するまでもなく、韓国はイ・ジョンスは鹿島アントラーズ、パク・チソンはかつて京都サンガ(現マン・ユ)等の選手がいる。北朝鮮は鄭大世(チョンチセ、川崎フロンターレ)と安英学(アンヨンハツ、大宮アルディージャ)の二人である。Jリーグはヨーロッパ諸国の主要なサッカーリーグと同じく、ワールドカップ級の選手が活躍する場となってきたのに、ここ数年Jリーグは中々盛り上がらない。

Jリーグの各チームはもう一度地域に根付くサッカークラブという原点に戻り、さらにサッカー以外のスポーツも取り組むよう切望する。日本、中国および韓国の経済は凡そ1,100兆円であり、北米やEUに続く第3の経済地域である。このような経済規模ならば、日中韓3カ国が共同してヨーロッパ地域のサッカーリーグと競合できる舞台を用意することができるはずである。そうすれば、世界中の一流選手が集まってくると同時に、サッカーをはじめ他のスポーツ競技も活性化され、結果として3カ国の人々や文化などの交流が一層高まり、ひいては経済規模もさらに大きくなる。

Sunday, May 02, 2010

Honorary Doctorate for PM Dato' Sri Najib Razak

On his official visit to Japan from April 18 to 20, 2009, PM Dato' Sri Najib Razak was conferred a Honorary Doctorate by Meiji University on April 20. The honorary doctorate was conferred for PM's outstanding records in promoting development in Malaysia, and Japan-Malaysia relation.

The conferment ceremony was attended by more than 500 people, including Malaysian students studying in Meijing University and other Japanese universities.



Friday, April 23, 2010

Meeting PM Najib Razak in Tokyo

Met PM Dato' Sri Najib Razak on April 19, at the State Guest House, Akasaka Palace, during PM's official visit to Japan.

Thursday, April 22, 2010

Malaysian Prime Minister's Visit to Japan

PM Dato' Sri Najib Razak visited Japan had an official visit to Japan from April 18 to 20. In this first official visit, since becoming the 6th Malaysian Prime Minister, PM Dato' Sri Najib Razak and Datin Sri Rosmah Mansor were received in audience by Their Majesties the Emperor and Empress of Japan.

In addition, PM hold official meetings with Japanese PM Yukio Hatoyama. The Summit Meeting between the two leaders concluded with a joint-statement for Malaysia-Japan's "Enhanced Partnership for a New Frontier," which lays out the following 4 key areas of cooperation.

  • Cooperation for Peace and Security;
  • Cooperation for Strengthening Competitiveness and Sustainable Growth;
  • Cooperation for Contribution in the Areas of Environment and Energy;
  • Cooperation for Human Resources Development and People to People Exchange.

Both leaders also concluded an agreement on "Japan-Malaysia Cooperation Initiative on Environment and Energy."

Japan's interest in Malaysia has declined substantially during the premiership of Abdullah Badawi in the past few years because of his weak leadership and incapability to articulate partnership with Japan.

But, PM Dato's Sri Najib Razak's visit to Japan has rekindled a renewed Malaysia-Japan relation, whereby "Look East Policy" has been one of the key pillars. At the same time it has also initiated new partnership for a forward looking cooperation beyond bilateral relations. From now on, the focus is to transform various initiatives into specific actions.

Thursday, April 15, 2010

アメリカの株価上昇への疑問

4月に入ってから米国経済に関する代表的な指標の数字は予想よりも芳しく、経済回復の期待が高まっている中で、14日にニューヨーク株式市場でダウ平均は11,123.11ドルで取引を終えた。これは2008年9月末の水準であるという。株価の動向は果たして現実の経済状況を反映しているかについて意見が分かれるのであろう。

株価は景気の先行指標であるとしばしば指摘される。したがって、近日のダウ平均の上昇は米国の景気が回復しつつあることを現しているのである。しかしながら、実物経済を測る米国の鉱工業生産はまだリーマンショック前のレベルに戻っていない。それなのに、なぜダウ平均が上昇しているのか。論理的に整理すれば、次のことになる。

株価は企業の将来収益を反映して形成されるものであり、ダウ平均の上昇はその指標を構成する企業の株が上がっている結果であり、同時にそれはそれぞれの企業の将来収益が増加するという期待によるものである。しかしながら、依然として鉱工業生産水準は低い状況の中で、企業の将来収益はなぜ増えるか、という疑問が残ると思われる。それは株価の上昇によって資産効果がプラスに働くと期待されているから、という説明になる。

リチャード・クーは米国の景気は決して株価ほどに回復されていないと警告している。同感である。ニューヨーク株式市場で景気回復を先行して株価が上昇しているのは、機関投資家などのプレやーによってもたらされた投機的な行動の結果であると指摘したい。つまり、企業の配当を得るよりも、短期的に株の売り買いという需給関係で一時的に株価を上げさせたりして利益を得る行動である。

アメリカ型自由経済・資本主義はサブ・プライム問題を起こし、それを端に発した先進国の経済危機という教訓は2年間が経たないうちに、再びに投機的な経済行動を中心に経済が動いているように見える。人間のアニマル・スピリットを抑止する資本主義を構築しない限り、ますますグローバル化になる経済においてより短いタイムスパンで危機が繰り返して起きるのであろう。

鳩山総理とオバマ大統領の非公式会談:雑感

核安全保障サミットへ出席された鳩山総理はオバマ大統領との公式会談が実現できなかった代わりに、外務省は米国のカウンターパートの理解を得て、夕食会に両首脳が隣り合わせの席上にて非公式会談をセットした。あいにくその会談はわずか10分程度に過ぎなかった。会談の主旨は普天間移設に関するものであった。

首脳同士の会談であるが故に、鳩山総理は日本語で、オバマ大統領は英語で、間にそれぞれの通訳を介して会談が行われたに違いない。また、10分間の会談だったので、それぞれの首脳の持ち時間は5分となり、通訳を介すれば一人の正味は概ね2.5分という計算になるのであろう。そうした状況の中で、各首脳の発言はたやすく以下のように推測することができよう。

「バラック、この夕食会においてお隣に座らせて頂いて非常に光栄に思い、謝意を表します。これを機会に、普天間移設問題について説明させて頂きたい。昨年の11月に東京で話し合った以降、日米同盟や日米安保条約の精神を維持し、宜野湾市の市民をはじめ沖縄県の県民、ひいては日本国民の期待を尊重しながら、あらゆる側面から検討させていただいており、私と致しましては、全力して5月末までに最善な結論を出すことに致します。トラストミープリーズ、バラック。」

(日英通訳後)

「ユキオ、こちらこそ、私が主催している核セキュリティーサミットにご出席頂き、厚く御礼申し上げます。核兵器無きの世界を実現させるために、日本からの協力が極めて重要であるので、よろしくお願い申し上げます。さて、普天間移設問題は正に日米同盟や日米安全条約の礎であるのみならず、わが国の国際社会の安全保障において最も重要かつ戦略的な基地となっております。ユキオのご尽力とご英断による普天間移設問題の円満な解決を高く期待しているところです。」

(英日通訳後)

「サンキューベリーマッチ、バラック」、(握手しながら)、「ノープロブレム、ユキオ、レッツ イート」。

Wednesday, March 10, 2010

報道メディアの「翻訳力」

日本の報道メディアは依然として政治に関心がなく、政局を煽る記事やニュースをばかり報道している。中でも、政治家の発言を「メディア語」に翻訳され、政局を煽る記事が多く作られている。以下の二つは具体的な例である。

その一つ、前原誠司国土交通相のテレビ番組で発言したものである(3月28日、テレビ朝日番組)。発言主旨は小沢民主党幹事長の「政治資金」に関するものであった。前原誠司大臣は「自身(小沢一郎氏)が幹事長という立場にあって、どうすれば参院選に勝てるのか考えてもらうことが大事だ」と述べたことを、メディアは「(前原誠司大臣が)国民の理解が得られない場合は自ら進退を判断すべきだとの認識を示した」という「メディア語」に翻訳された記事であった。

次に同じく前原誠司国土交通相は9日の午前に行った記者会見で、「政権交代をしたという 歴史的使命感に立って当事者が判断することだ」と述べたことを、メディアは「(前原誠司大臣が小沢一郎幹事長は)自発的に進退を検討すべきだとの考えを示した発言だ」という「メディア語」に翻訳された記事であった。

以上のように、報道メデァアは、前原誠司大臣が実際に発言したもの(イタリックの文章)を政局を煽るような解読や見解(太字の文章)を一般大衆に伝えるのである。政治家の発言は日本語という言葉通りに解せず、あるいはその発言の真意が言葉のままではなく解読が必要であり、何より報道メディアはその解読力をしか持ち得ない、という不思議な報道メディアの翻訳・解読の力であろう。

Sunday, March 07, 2010

首都高山手トンネル

西新宿JCTから大橋JCTまで4.3キロ区間が3月28日に開通することになり、約18年間をかけて全長11キロの首都高山手トンネルの建設はようやく完成されたのである。前半の熊野町JCTから西新宿までの6.7キロ区間は07年12月に開通した。山手トンネルの区間は板橋の熊野町JCTから渋谷の大橋JCTまでである。

当該トンネルは先駆的な工法で「シールドマシン」という直径約13メートルの円形堀削機によって造られた。また、騒音、排気ガス、トンネル上の景観、沿道環境などのエコロジー・環境にやさしい技術が導入されている。

首都高速道路株式会社の資料によれば、利用者は都心環状線を通さず、山手トンネルで東北道と東名を結ぶ走行距離は約5キロが短くなり、それの通過時間は18が短縮されるという。それによって年間約34,000トンのCO2削減に貢献する。CO2トン当たり2,000円だとすれば、年間6,800万円の価値となるのであろう。温暖化効果ガスの削減とは別に、利用者の時間短縮は山手トンネルが与える最も大きな効果に違いない。

トンネルの上:山手通り


トンネルの上:山手通り(煙突のようなものは高さが45メートルの換気塔であり、トンネルへの給気とトンネルから処理された排気ガスの排出)


大橋JCT:東名、渋谷への分岐


大橋JCT:西新宿方面のトンネルから上がってくる

Thursday, March 04, 2010

国際スポーツ競技における日本競争力の強化

今朝、桜井充参議員が参議院予算委員会で今後国際スポーツ競技会においてチームジャパンの強化に関する鳩山政府の財政支援について、鳩山首相と川端文部科学大臣との質疑応答を聞いた。チームジャパンはバンクーバーオリンピックでメダル5つしか獲得できなかった。それは隣の韓国や中国、そしてアメリカ、イギリス、ドイツ等の他の先進国のパフォーマンスと比べられない結果であった。

メディア報道でもあったように、桜井充参議員はチームジャパンのメダル獲得数は期待より遥かに低かった原因は国の財政支援が少なかったからであると指摘していた。ドイツ、アメリカ、イギリス、中国や韓国はバンクーバーオリンピックのために選手の強化費用はそれぞれ274億円、165億円、120億円、120億円、110億円にあったのに対して、チームジャパンが受けた公的支援は約27億円であった。こうして比較すれば、メダルの獲得数は公的支援額の大きさに比例していることが明らかである。それが故に、今後国際スポーツ競技に参加する日本選手の競争力を高めさせるために公的資金の導入額は大きくしなければならないというロジックが成立し、それを反対する人はいないのであろう。

確かにチームジャパンの国際競技において競争力を向上させるために政府の財政支援が不可欠であるが、そればかりではない。財政支援の他に民間企業や個人のスポンサーシップも極めて重要であるのも異論はない。しかしながら、もう少し創意的な取り組みを検討する必要があるように思う。

例えば、政府、民間企業や個人のスポンサーシップを超えて、長期的かつ持続的に日本の各地において地域に根ざすスポーツ選手の育成・強化を取り組むモデルの導入が考えられる。それに近い形はJリーグモデルであるが、それが殆どサッカーに限定している。つまり、地域に根ざすプロスポーツクラブを確立し、国際競技の種目を幅広くスポーツ選手の育成と強化、ひいては国際的に高い競争力を持つスポーツ選手を絶えず育てていく仕組みを展開していくことである。そのうえに、公的・民間・私的スポンサーシップを取り付ける。また、このような仕組みは実に地域の活性化にも繋がるという一石二鳥の効果がある。

分かり易い例はスペインのバルセロナスポーツクラブである。当クラブはサッカーのみならず、当地域の住民の支援を受けてレベル高い様々な競技の選手を抱えている。

Tuesday, February 23, 2010

冬季五輪と日本メディアの報道

日本メディアはバンクーバーの冬季オリンピックに参加している日本の選手のメダル獲得に対して大きな期待を持っているようである。23日現在日本勢が取れたメダル数は3つであり(1銀、2銅)、それが日本放送界の予想と期待からかなり少ないと思われる。それは多くの日本選手の実力以下という予想に反した結果よりも、元々日本勢の実力はかなりの種目において決勝ラウンドに進む実力を持ちながらも、メダル獲得に至るパワーが不足していると解した方が正しい。

こうした現実は日本選手が最も知っているはずなのに、日本メディアは大会の前、そして大会中に日本選手の実力を大きく膨らませながら、メダル獲得の期待を大きく煽らせ結果、選手のパフォーマンスに対して国民が失望している。しかし、全ての選手は全力を尽し、メダルを獲得するに至らなくても、競技界の最高級であるオリンピックに出場できたことに満足しているに違いない。それは素晴らしいスポーツ精神であると思う。

こういう姿勢はメディア界にとってはニュースの価値がなく、むしろ選手の実力を遥かに超えた幻想を作り上げ、読者や視聴者を囲んでニュースの価値を煽り、メディアの役割、報道の客観性や選手のスポーツマンシップ等は二の次である。

謂わば、「犬は人を噛んだ」に関してはニュース価値がなく、「人は犬を噛んだ」というのはニュース価値である。

Monday, February 15, 2010

日本財界首脳選出

日本経済団体連合会(通称、経団連)は次期会長を米倉弘昌住友化学会長に内定した。御手洗高士夫現経団連会長は、米倉次期会長が選ばれたのが「経済のグローバル化に適応できる人物」を最大な理由の一つであると強調していた。日本財界の首相と言われているこのポストは選ばれた人の過去と現在の実績で評価され、それを下に向こう2年間ないし4年間(一期2年または2期4年)にわたって日本財界の取り組むべき課題、ならびにそれに伴う斬新的なリーダーシップが期待されるのである。

しかし、今日日本経済や財界が直面している問題は、言うまでもなく10年以上のタイムスパンで、ますます少子・高齢化という国内の厳しい制約条件の下で、いかに変貌していくか、そしてその社会・経済・政治構造がグローバル的な競争において勝ち抜くかである。そうした環境に於かれているにもかかわらず、経団連は依然として高齢者である経済会の代表を会長として選び、そしてそのポストを支えるメンバー(理事や評議員)もまた高齢者である、という経済界の高齢者指導集団を固執している。

リーダーの評価は過去と現在の実績が大切であるが、未来に向けていかにリードしていくかという能力や素質がより重要であるとしばしばリーダーシップの研究者に指摘されている。従って、経団連の指導者選出方法を改めなければならいのではないかと思う。つまり、伝統や慣習である「年功序列」という発想ではなく、未来の構築、そしてその理想にむけて実現させうる若手指導者を中心にした体制に変革すべきである。

過去、現在、未来という3つの区切りで考えると、過去と現在の実績の観点で経験豊富な年寄りが後見人に添え、彼らの助言のもとに、未来の挑戦に活力、柔軟性、発想力などの視点が富む若手経済人をリーダーにする体制を求めたいのである。

Friday, January 15, 2010

「没有」

中国語の「没有」を日本語に直訳すれば「ありません」という意味である。しかし、中国ではかならずしもその意味として使われていないようです。

約20年前に、北京等の中国の大都市で夕食を取ろうとしていた時に、多くのレストランでメニューの8割、特に美味しそうなものについて「没有」とばかり言われていた。当時は計画経済だからモノ不足だと思いこんでいた。しかし、実態はそうではなく、レストランの従業員は早めに店を閉めたく、客の注文通りに営業をしたら帰宅も遅くなり、それを避けるために「没有」という台詞で対応したのである。今日、日本よりも市場経済システムが浸透している中国では「没有」という精神は未だ残っている。

先日、2年ぶりに上海を訪れた機会に、東京の紀伊国屋とか丸善とか相当する「書城」という書店で、中国の「気功」を解説する本を購入しようと思い、案内カウンターの店員に尋ねたら、「没有」と言われました。そうか、「書城」にはこういう類の書籍を取り扱っていないのだと納得して諦めざるを得ませんでした。しかし、案内カウンターからちょっと離れた本棚に「太極拳」とか「少林拳法」とかの本が並んでいるのを見かけ、確認したところ、「気功」類の本が何冊もあった。解説が分かりやすいものを1冊購入した。

今回の経験を通じて分かったのは、この「書城」では「気功」の本が「没有」ではなく、案内係りの店員が「いま、こちらが同僚と喋っているから、邪魔だ」の言う代わりに「没有」という表現を用い、客を追い払ったことである。