Friday, July 24, 2015

日本経済:インフレの想像!?

IMFの日本年次審査報告によれば、2015年に日本経済は0.7%の成長率になると予測している。また、黒田日銀総裁が掲げている2%の物価上昇率を達成するために、追加金融緩和が欠かせないと勧告した。さらに、今後経済の安定成長を維持するため、財政健全化や労働市場の改革を喫緊に取り組まなければならないと指摘した。ご最もな勧告である。

2013年4月に着任以来、黒田日銀総裁が掲げた2%の物価上昇率の達成は「想定外の原油安」によって2016年の後半にズレることになった。どうも黒田総裁は物価上昇の目標を達成するには、自ら動員した「異次元金融緩和」という政策に問題があるのではなく、物価統計の集計に用いられるバスケットの中身が「原油安」によって大きく影響を受けたと考えているようである。総務省の総合CPIは東京大学物価指数と比べても前者の方が高く推移している。5月前年比では、前者は1.07%であり、後者は0.21%であった。つまり、総合CPIは適切な指標であれば、物価が上昇しつつある。逆の場合であれば、日本経済の物価水準は消費増税や賃上げの中でも安定していると理解しなければならない。

日本では「異次元金融緩和」は果たして物価上昇をもたらすのかという問いについて当面回答が得られないと思う。一般的に、日米欧の中央銀行は金融政策の運用に「フォワード・ルッキング(forward looking)」という手法が定着しており、市場に対して次期以降にわたって政策の最適化を調整する必要があり、そのためにベンチマックの指標を設定しなければならない。FRBのエレン議長は失業率と非農業部門の就業者数という二つの指標を重視している。それに対して、黒田総裁のフォワード・ルッキングのベンチマークは総合CPIや失業率の指標ではなく、「あらゆる角度から見て物価は確実に上昇する傾向にある」というセリフである。ブルームバーグ社はこれまでの黒田総裁の発言に呆れており、遂に皮肉的に「日本銀行はインフレを想像しているのみ(Bank of Japan Only Imagines Inflation)」と題する記事を発信した。その通りであると拍手を送りたい。

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