Tuesday, March 11, 2008

円高

円高、原油高、株安の連鎖で小泉元首相の改革によって上向きになっていた景気は再び転落する趨勢になってきた。原油高は主に中東における地勢学での供給要因と中国やインド等からの需要要因の他、米景気後退の加速が観測されている中のドル安によるものである。そして、サブプライム住宅ローン返済問題を端に端した米景気の悪化によって日本企業の業績が悪くなつという観測が一段と強くなってきたのは株安をもたらしていると指摘されている。FRBは米景気の後退を歯止めるために金利を引き下げ、その結果日米両国間の金利格差が縮み、ドル安と同時に進行している状況の中で、円高が進んでいる。

円高に関してマスコミや政治家の多くは日本経済にとって悪いという論拠が聞こえている。果たしてそうなのか。「デカップリング説」と言わないまでも、グローバリゼーションの流れで経済の相互依存度が高まり、アメリカの経済が鈍化すれば、世界経済を持続的に成長させるためにはそれ以外の国が需要を作り出しくことが肝要である。

つまり、アメリカ以外の国々はいかに各々の経済を成長させることである。こうした視点から円高は日本にとって追い風であるに違いない。換言すれば、円高は原油や大豆・小麦とかの食料品、そして鉱物・工業の原材料の輸入を緩行する。しかしながら、マスコミや政治家の議論は円高が輸出部門に打撃し、景気の足を引っ張り、よって悪であると決め付けている。とは言っても、最新のGDP統計(2007暦年)によれば、季節調整済の名目財貨・サービスの輸出は約94兆円(対GDP比の17.6%)に過ぎず、輸出に頼る経済成長の期待が明らかに限界がある。

むしろ、民間最終消費は約295兆円(対GDP比の56.9%)であり、政府の景気対策は円高のメリットを活かし、民間最終消費支出を促すことがマクロ経済学イロハであるのではないか。例えば、所得減税や国民の生活が豊かになるよう公的支援(ハコモノや高速道路等のインフラ建設の公共投資ではないことを留意)、外国人投資家や観光客の誘致、円高のメリット活かした海外旅行の推進等が挙げられる。

永田町や霞ヶ関の関係者に党益・派閥の利益を追求するのではなく、国民生活が豊かになる対応、ひいては日本経済が世界経済の持続的な成長を引っ張っていく対策を実行して頂きたい。また、マスコミにもこのような円高メリットを読者に対して喚起してもらいたい。

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