Thursday, April 15, 2010

アメリカの株価上昇への疑問

4月に入ってから米国経済に関する代表的な指標の数字は予想よりも芳しく、経済回復の期待が高まっている中で、14日にニューヨーク株式市場でダウ平均は11,123.11ドルで取引を終えた。これは2008年9月末の水準であるという。株価の動向は果たして現実の経済状況を反映しているかについて意見が分かれるのであろう。

株価は景気の先行指標であるとしばしば指摘される。したがって、近日のダウ平均の上昇は米国の景気が回復しつつあることを現しているのである。しかしながら、実物経済を測る米国の鉱工業生産はまだリーマンショック前のレベルに戻っていない。それなのに、なぜダウ平均が上昇しているのか。論理的に整理すれば、次のことになる。

株価は企業の将来収益を反映して形成されるものであり、ダウ平均の上昇はその指標を構成する企業の株が上がっている結果であり、同時にそれはそれぞれの企業の将来収益が増加するという期待によるものである。しかしながら、依然として鉱工業生産水準は低い状況の中で、企業の将来収益はなぜ増えるか、という疑問が残ると思われる。それは株価の上昇によって資産効果がプラスに働くと期待されているから、という説明になる。

リチャード・クーは米国の景気は決して株価ほどに回復されていないと警告している。同感である。ニューヨーク株式市場で景気回復を先行して株価が上昇しているのは、機関投資家などのプレやーによってもたらされた投機的な行動の結果であると指摘したい。つまり、企業の配当を得るよりも、短期的に株の売り買いという需給関係で一時的に株価を上げさせたりして利益を得る行動である。

アメリカ型自由経済・資本主義はサブ・プライム問題を起こし、それを端に発した先進国の経済危機という教訓は2年間が経たないうちに、再びに投機的な経済行動を中心に経済が動いているように見える。人間のアニマル・スピリットを抑止する資本主義を構築しない限り、ますますグローバル化になる経済においてより短いタイムスパンで危機が繰り返して起きるのであろう。

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