Friday, May 08, 2015

イエレン議長の発言

米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は5月6日に米国の株価は「かなり高い(quite high)」と指摘した。イエレン議長の発言は株価の割高に対する口先介入であろう。その結果、6日のNYダウは-82ドル、7日の日経平均は-239円、香港ハンセンは-350HKドル、上海総合は-117元、ロンドンのFTSE100は-46GBP等の主要株式市場の指数が揃って下落した。今後、果たして主要なマーケットの株価はイエレン議場の警鐘を受けて適切に調整されるのだろうかと細心の注意を払いたい。

90年代のITバブル期に、グリーンスパン元FRB議長が1996年末に「根拠なき熱狂(irrational exuberance)」という表現で米国の株高に警鐘を鳴らしたが、株高の趨勢は2000にかけて続いた。株価とは将来の期待利益から形成される。その期待感は株の売手と買手各々によって異なる。口先介入はその期待感に対して影響を与えようとしているが、現実に株の売り買いという需給の調整に及ぼすのに時間が要する。したがって、グリーンスパン氏の警鐘は無視されたままに株価が上昇し続いたのである。

イエレン議長の警鐘は恐らく短期的に効果がないと考える。上述したようにマーケットの株価指数は揃って下落したが、それも極短期間(一日二日程度)の変動であるに違いない。米国の株高は実物経済における各々関係企業の期待利益を反映されているとは限らない。最も株式市場への資金流入は先進国・地域の0.0〜0.5%の金利、ならびに量的緩和によって引き起こされた結果である。株の保有者(購入者)は有り余った資金を株式市場に投資し、金利より高い配当と株価のキャピタルゲインの両方から利益を追求しようとしている。その結果、株価は実物経済と乖離し、株の投資家は自己 充足的予言(self-fulfilling prophecy)の行動を取ってしまうのである。つまり、皆が株に投資するから株価は上昇し、その結果、株価は現実に上昇するに違いない。

では、その状況が未来永劫に続くか。否、上がっていく物体はからなず落ちてくるという物理法則と同じく、上がった株価は必ず下がってくる。時間の問題である。イエレン議長の発言は割高の株価が調整されるかについて筆者は否定的である。むしろ、それではなく、何かの引き金で割高の株価が調整され、しかもその調整は行き過ぎたりする可能性が多いにあると思う。その際、皮肉的に多くの人々が婆を引くのである。


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