Saturday, May 06, 2017

トランプ政権は短命に終わる:岩井克人の予想!

 岩井克人(東京大学名誉教授、敬称略)は『學士會会報』(第924号H29.05.01)に「僭主トランプ誕生について」と題するエセーイを投稿した(pp. 35-39)。このエセーイはトランプががアメリカの国内政治、経済と社会の状況が相対化してきた国際情勢に対して従来と異なる投票行動によって選ばれたと説明した。ただ、ここで留意すべきはトランプの勝利は投票数ではなく、選挙人数によってもたらされた点である。
 岩井克人の説明は決して新しいものではなく、言論界で多く指摘されている。彼はむしろエセーイの終わりにかけて四つの理由でトランプ政権が短命に終わるという予想を示した。
 第一に、アメリカ大統領の選出は民意を反映せずに、投票数よりもワシントンDCと50州が与えられた選挙人数の多数で決定する。つまり、トランプは投票数がクリンドより少なかったが、選挙人数が多かったので、勝利したのである。こうした結果は岩井克人が当国の「直接民主制」の仕組みとして民意の反映と正当化することが失われていると指摘した。
 第二に、トルンプのマニフェストに掲げた保護主義による雇用拡大、国際安全保障体制へ少なく関与することは実に国内外経済の実態と矛盾し、国際安全保障の安定と米国の軍事力関与の軽減は二律背反である。選挙中の約束を守るなら、国際社会におけるアメリカの地位は衰退する。現実を合わせた政策を取り組む場合、トランプの人気は激減する。
 第三に、選挙中に金融エリートないしウォールストリート・コンプレックスを批判したにもかかわらず、経済閣僚の多くはウォールストリートの出身である。そして、オバマケアの廃止は100日間以内に頓挫した他、メキシコとの国境に壁を建設する予算も盛り込まなかった。これらは端的に人選の問題と政策の失敗と言えよう。
 第四に、トランプの足元の混乱、ならびにホワイトハウスと議会の共和党代議士の対立は、民主党にとって追い風となり、2018年11月の中間選挙に優位となる。そのような結果になれば、議会はトランプの弾劾を動議する可能性がある。
 さて、岩井克人の予想は果たして当たるか、2018年の年末ごろに明らかになるかもしれない(笑)。
 

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