Monday, March 23, 2015

アジアインフラ投資銀行

 中国の主導にアジア諸国の経済発展に欠かせない経済インフラを整備するために融資する政府間金融機関となる「アジアインフラ投資銀行(Asia Infrastructure Investment Bank, AIIB)」が創設される。AIIBの資本金は1,000億ドル(約12兆円)とし、中国は500億ドルの出資を確約しており、最大な株主になるよう目指している。
 欧米日の先進諸国は中国の政治的思惑等を理由にAIIBへの加盟を慎重な態度を取ってきたが、英国を始め、ドイツ、フランス、イタリア、ルクセンブルクとスイスは創設メンバーとして参加すると表明した。さらに、オーストラリアが加盟したく、閣僚の承認をまっていると報じられている一方、中国は韓国に対して加盟を促しているようである。
 3月22日現在、創設メンバーとして参加する国は以下の33か国である。
  • 東北アジア: 中国、モンゴル。
  • アセアン10か国: ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム。
  • 南アジア: バングラデシュ、インド、モルディブ、ネパール、スリランカ、パキスタン。
  • 中央アジア: カザフスタン、タジキスタン、ウズベキスタン。
  • 中近東: ヨルダン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア。
  • ヨーロッパ: フランス、ドイツ、イタリア、ルクセンブルク、スイス、英国。
  • オセアニア: ニュージーランド
 残念ながら、日本は米国と同じく、AIIBと距離を置いている。麻生蔵相や菅官房長官は揃って慎重に検討したいと発言している。日本政府の消極さは「AIIBのガバナンス、中でも審査基準の透明性や環境に配慮した融資実施の条件が十分に整っていない」という理由にあるようである。日本にとっての外交や国際経済の相互依存の観点からAIIBヘの参加を躊躇するのは不可解である。中国の主導でAIIBのガバナンスに不透明なものになると懸念しているならば、創設メンバーになって国際レベルのガバナンス体制の確立に手を差し伸べ、世界銀行やアジア開発銀行(ADB)の経験やノーハウの蓄積をAIIBに移転し、当機関の融資案件の形成や審査能力の強化に貢献すべきである、と素直に考える。
 ADBの推計によれば、2010-2020の期間中にアジア地域は約8兆ドル(約960兆円)のインフラ投資の資金が必要としている。この規模の資金調達は容易ではないことが言うまでもない。また、他方、アジア諸国は輸出によって貯めている外貨準備高は約7兆ドルがある。それらの資金は現に決して効率的に運用されておらず、むしろ米国をはじめ先進諸国の国債に投資し、つまり借金しているだけである。
 AIIBは既存の政府間金融機関と補完的な役割を演じるのみならず、アジア諸国の資本で域外諸国の資金を呼び込んで、アジアの長期的経済発展に寄与するのはミッションである。こうした観点からでも、日本は米国の意向ではなく、自らの国益の増大に繋がるAIIBの創設に参加すべきである。

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