Tuesday, December 02, 2008

アフリカの開発

 11月20日のBBC報道によれば、韓国財閥である大宇(Daewoo)がマダガスカルで100万エーカー(400平方キロ)の農地借地権を99年間獲得し、今後年500万トンのトウモロコシを栽培して韓国へ逆輸入するビジネスモデルを確立しようとしている。この大宇モデルは、依然として一人当たりの所得が一日2ドル以下である7億人の人口を抱えているサブサハラ地域において適応可能であれば、当該地域の貧困撲滅に最も必要とされる雇用と所得の誘発に貢献できると考えられる。しかしながら、このモデルは労働集約的なものの代わりに資本集約的になれば、雇用と所得の誘発効果が期待できないという懸念もある(つまり、資本財は労働力を代替して雇用誘発効果がミニマムとなる)。

 この考察に関して、入山映博士(前笹川平和財団理事長、前笹川アフリカ協会副理事長)から以下のコメントが寄せられた。

 「MDGとかTICADとか、途上国、就中アフリカについてODAの投入によって貧困からの脱出が可能になると誤解させるような論調が珍しくはない。これがとんでもない錯覚であることは明らかだ。世界中のODAを合算してみても10兆円なのだから、こんな桁の数字で10億人を超えるアフリカの人口が救われる訳がないのは算数の世界だ。だから、市場との連携、もっとはっきりいえば先進国からの現地投資、それによる現地産業の成立がなくては貧困からの脱出などは夢のまた夢である。現地産業の成立のためには比較優位を持つ安価な労働力の創出は大前提で、そのためにも、かつて日本がそうであったような媼農業生産性の向上による余剰農業人口の第二次産業への入は必須の前提条件になる。内発的開発とか、ボトムアップの開発と言った口当たりの良いキャッチフレーズは、それとして意味がないとは言わないが、この冷厳な事実を認識していなくては何も始まらないというべきだろう。

 その意味で、大宇のマダガスカルプロジェクトは望ましい方向に向けての開発努力であることは認められても良い。しかし、二つの留保条件が直ちに念頭に浮かぶ。第一はいうまでもなく他のアフリカ諸国、特にサブサハラ諸国への適用可能性だ。灌漑農業を前提とする限り、先行するインフラ投資がなされなければ汎用性はごく低いと言わねばならぬ。第二はこれが現地農業労働力の生産性向上にどれほど意味があるのかが不明な点だ。メイズはアフリカの主食食物であるのは事実だから、たとえ輸出志向であれ、作物選定に問題はないが、この点はなお検討される余地がる。もちろん付加価値生産性を現地において高める可能性はいくらもかんがえられるから、第一の点とは異なり、このプロジェクトの意味を減殺するものとはいえないだろう。

 いづれにせよ、魚を与えるよりは魚の釣り方を教える、という古典的な開発哲学からしても、好ましい方向への一歩であることは認められてよいだろう。なりふり構わず天然資源確保のために資金をばらまいている中国のやり方よりは、はるかに優れたものであり、この延長線上にいくつかの発想が生まれるならば、あるいは記念すべきプロジェクトになるかもしれない。特に、これまで類似の農産品輸出プロジェクトが、製品の品質管理や納期などの点で頓挫した例を反面教師にすれば、大きな意味を持ち得ると評価しても良いものと思われる。」

1 comment:

Anonymous said...

To comment on yur blog is cumbersome and you had better rectify the situation.