Monday, October 12, 2015

インドネシア高速鉄道受注争い

ジャカルタとバンドン間の約140キロの高速鉄度建設の受注を巡って日中両国が争っていた。残念ながら、インドネシア政府(ジョコ大統領の決定)は「インドネシア政府に財政負担や債務保証を要求しない」という中国側の案を採択した。日本側、とりわけ菅官房長官は「理解に苦しむ理由」であると納得しない発言がなされた。

当該プロジェクトについて、日本政府は円借款50億ドル、うち、75%を対象に0.1%金利、2021年に完成する提案であった。それに対して、中国政府は60億ドル、全額を対象に2%金利、2018年完成する提案であった。経済合理性の観点から、インドネシア政府は日本の提案を採択すると日本側の関係者がかなりの自信を持っていた。

しかしながら、ジョコ大統領は関係閣僚と日中両国の提案を検討に検討を重ねた結果、「高速鉄道を作らないと決めた。中速度の鉄道で十分」と決め、日中両側に当初の提案を白紙に戻させ、新たな提案を促した。また、実は事実はジョコ大統領は「(インドネシア)政府の資金を投入せず、民間資金で建設、運営できる高速鉄道を作りたい」という発言がなされたが、少なくとも日本側があまり重要に視しなかった。

ジョコ大統領は中速鉄道を建設したいという意向を日本側がまず一安心にし、いわゆる新幹線ではなく、特急の建設案を作り、再提案しようと考えていた模様であった。ところが、走行しているうちに、インドネシア政府から中国の提案を採択したと伝えてきた。それを受けて菅官房長官をはじめ、官民両陣営の関係者が本稿の冒頭に書いた「理解に苦しむ理由」と発言された。

今回の争いについて少なくとも二つのことが言えよう。

その一、日本企業は政府の保証(円借款)がなければ、事業を取り組むリスクが取れない。極端に言えば、政府と共同しなければ、日本の民間企業は海外で事業を遂行する能力がないといっても過言ではない。

その二、ジョコ大統領はジャヴァ人であり、当民族の言論や行動はあいまいでありながらも、予測可能である。言い換えれば、ジャヴァ人は京都人と同じく、あいまいに発言したり、行動したりするが日本人ならば、京都人の行動を理解し、または予測でもすることが可能である。ジョコ大統領は「・・・・。中速度の鉄道で十分」という決定を発表した際に、日本側の関係者はその裏を読む込むべきであった。とりわけ、「)政府の資金を投入せず、民間資金で建設、運営できる高速鉄道を作りたい」というジョコ大統領の真意、さらに彼は商売人の出身という背景を含めて理解すべきであった。

こうしてみれば、日本の政治家、官僚、財界の代表は円借款や無償援助からなるODAを発展途上国に提供すれば、日本企業(正確に政官財)がインフラ事業や市場の確保を容易くなると思ってはならない。それに関連して、財界から大学の人材育成に「一般教養ではなく、専門知識の教育をより重視してほしい」と文科省と文科族の政治家に注文し、挙句の果てに、文科省の役人が国立大学に対して「人文社会系の教育」を無くし、専門教育を増やすように通達による指導が行われている。

高速鉄道の案件を受注する前に、発注側の文化や歴史、そして慣習などが現地の指導者の行動に影響を与えることを理解する人材が求められる。高速鉄道にかかわる専門知識は実に受注できた後で登場してくるものである。つまり、受注ができなければ、専門知識を持っている専門家が活躍する場がないのである。

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