Monday, March 27, 2006

卒業式の季節(上)

3月になると、教育部門では卒業式の季節を迎える。私の大学も同様、さる3月14日に学部、大学院、そして日本語別科の卒業式を行った。今回の卒業式に私のゼミから12名の卒業生を出した。なかでも、留学生2名(中国籍)であった。00年4月に私が大学に転職してから、今回の卒業生は5期目に当たる。昨年の場合、留年生が2人いったが、今年では全員が卒業でき、ゼミの担任としてほっとした。12名の卒業生のうち、就職が決まった者が9人、大学院へ進学する者が1人、この4月より専門学校へ進路を変更する者が1人、そして就職が決まっていない者が1人(3月14日現在、役員面接が残っているとのことですが、景気も上向きになってきたことから、採用されると思いたい)。

今日の日本では、経済学の視点から大学での勉学が「投資」か「消費」かについて議論が二分されている。私が大学で教える前に、前者の論者であった(自分がそうであったから)。しかし、大学の教員になってから、我が大学の多くの学生の行動を観察すると、大学での勉学は「消費」であると推論せざるを得ない。多くの学生は卒業に必要最低限の単位を取得し、そのために、出席に煩くない講義や課題が少ない授業とゼミを履修する。また、1年生~3年生にとって、キャンパスに来る時間の多くは同好会や部活、そして仲間との喋りである。キャンパス外の時間は多くバイトに傾注している。4月生になった時点から(なかでも、3年生の後半から)就活に忙しく、授業やゼミに出席する時間が取れず、課題をやる余裕もないのは現状である。出席や課題提出などに厳しくする教員もいるが、彼らの担当授業やゼミを履修する学生の数が少ないという。また、少子化の環境の中で、学生の数を確保するため、カリキュラムでは必須科目の数が少なくなってきており、選択科目が増える傾向にある。

経済学の「機会費用」という概念を考慮に入れれば、人文系の私立大学生は4年間で約2,000万円の費用がかかる。大学に支払う入学金、授業料や諸設備費は4年間で約500万円、生活費(教科書代、通学代、家賃や小遣い等)は平均して4年間で500万円、そして、高校を卒業して、就職していれば、年間250万円を稼げると仮定すれば、4年間で約1,000万円の収入を犠牲することになる。現状では、大学卒の初任給は、業種にもよるが、平均して18万円~20万円になると言われている。このようにか勘定してみると、大学での勉学は「投資」か「消費」かのいずれの行動になるかが明らかになろう。

No comments: