1945年以降、 世界経済の安定的な発展を支えてきた政府間金融機関である国際復興開発銀行(IBRD、通称世界銀行)、国際通貨基金(IMF)、 ならびに地域ベースの発展を促進するアジア開発銀行(ADB)やアフリカ開 発銀行(AfDB)、そして冷戦後の旧社会主義国であった東欧、中央、 旧ソ連地域の体制転換を支援するヨーロパ復興開発銀行(EBRD)等は米国が 主導に 西ヨーロッパと日本の協力を得て運営されてきた。 これらの多国間金融機関の融資条件や審査基準は先進諸国のスタンダ ードで行われ、 融資対象国は課されるコンディションナリデイに従わなければ、 支援を受けることができなかったのである。
1980代後半にJohn Williamsonという経済学者がラ米諸国は債務危機の救済に米国の国務省や財務省をはじめ多国間金融機関から融資を受けるために新古典派経済学パラダイムに沿って財政規律、貿易の自由化、民営化、為替レートの自由化や規制緩和等の10 分野の経済改革や構造調整を行わければならないと指摘し、またそれらの改革はワシントンの 有識者(政治家、官僚や政策立案者、国際金融機関の代表や研究者等)の間に共通した認識、つまりコンセンサスであると主張した。John Williamsonの主張は米国の政府および多国間金融機関の支援を受けるために、被援助国が「ワシントン・コンセンサス」が定めた改革パッケージを実施することが条件またはコンディションナリディの一部となったのである。
ところで、中国は経済規模およびその影響力が高まるにつれ、 70年前に米国主導の国際協力体制に対して代替する政府間組織の 創設を提案してきた。AIIB創設の前にブラジル、ロシア、 インド南アフリカと組んで、1,000億ドルの資本金および1, 000億ドルの共通外貨準備高の保有をもつBRICS開発銀行( 「新開発銀行」と称されている)を創設した。さらに、 中国は400億ドルを投じて「シルクロード基金」を創設し、その目的は中国と中央アジア諸国を繋ぐシルク・ロード、 および中国とアフリカを繋ぐ海洋の通商ルートの経済圏の発展を支えるイ ンフラ整備を支援することである。
中国の積極的に国際経済協力や資金援助を実施していく中で、「ワシントン・コンセンサス」と対照に、自らの発展経験に基づいて「政府主導の開発主義 」、「被援助国の国情に対する尊重」、「援助国からの条件付きの拒否」等のあり方で資金援助を受けなければならないと主張している。これらはいわゆる「北京コンセンサス」である。中国は北京コンセンサスで新たな国際援助・協力の理念を掲げ、これまで米国が主導したワシントン・コンセンサスのコンディションナリディーの押し付けを払拭しようとしている。
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