8月に入って円・ドル、そして円対主要通貨の為替レートは高くなってきた。それを受け、メディアが一段高くなった円は経済状況は更に悪化させ、特に輸出向きの企業にとっては国内外の側面からダブルパンチで食らわれていると報道している。たとえば、トヨタ自動車は対ドルの為替レートは1円高の場合利益が300億円減少するという例が良く引き出されている。しかし、経済学のイロハをさえ理解すれば、現実に円高がもたらした影響は必ずしもメディア報道の通りではない。
第一に、為替レートの価値は物価と貿易量の要素を考慮に入れて評価しなければならない。つまり、物価と貿易量を反映した為替レートから円の真の価値を評価すべてである。物価と貿易量を加味した指標は実質実効為替レートと言う。円対ドルの実質実効為替レートは日銀が過去30年の推移をまとめており、円対ドルの実質実効為替レート指数を見れば、2005年は100とすれば、2010年7月現在それが98.36となった。つまり、円対ドルの為替レートは物価と貿易量を考慮に入れれば、決して円高になっていない。したがって、いまの円高と声高に叫ばれる根拠はなく、いまの円はむしろ2005年よりも価値が低い。
第二に、日本の輸出はGDP比が約12%(約60兆円)であるに対して、輸入はGDP比が約10%(50兆円)である。さらに、製造業に占めるGDP比は約20%に過ぎず、その半分は輸出の付加価値に寄与していると考えてよい。実は輸出商品の中に全てトヨタ自動車のように完成品ではなく、多くは中間財であり、それらの中間財は海外の日本企業へ欧米等の多国籍企業に供給されている。アップル社はアイホンやアイパッドのような製品を作るために日本企業から中間部品を購入している。円高で代替部品が見つからない限り、アップル社としては他のコストを削減してもアイホンやアイパッドの製品を値上げさせないで販売が続いている。言い換えれば、必要がされる部品が日本国内で製造され、円高の影響はあるとすれば、それが末端の完成品の販売元にそれが転化され、日本国内の企業にとってさほど影響を及ぼさないはずである。こうしてみれば、円高の影響はメディア報道のように深刻ではないことを理解できよう。
日本の不況は構造的なものであり、それが政治不全の状況によってさらに不況脱出の糸口が導かれない状況が続いている。円高は輸入にもってプラスな効果が大きく、海外旅行も安くなったりするように、この不況の中でも生活を豊かにさせることが十分可能である。にもかかわらず、メディアは日本の再生に国民に対して本質か建設的な言論を提示しないまま、毎日円高だ、政局だ等の極めてレベルの低い報道を作り出し続け、この国はメディアによって滅ぼさせかねない。
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