近年首都圏への相互乗り入れる地下鉄や私鉄の運行数が増加している。8月27日読売新聞の夕刊によれば、東京近郊の相互乗り入れ路線の総延長は90年現在の535キロであったのに対し、08年現在は922キロとなり、1.7倍増となった。23区に在住されている人々は、通勤時間台に頻発している乗り入れの電車の遅れによって迷惑を蒙っているに違いない。筆者も頻繁に影響を受けている。
鉄道相互乗り入れは通勤・通学圏が拡大される一方、利便さが増しているのは紛れない事実である。しかし、首都圏に住んでいる人々にとっては相互乗り入れによって頻繁に電車が遅れたり、それによってダイヤが乱れたりして迷惑であると思う利用者が決して少ない。経済学はこういう状況を「外部性」という。標準的な教科書は「外部性」が生じた場合にそれを正すために政府の介入が欠かせないと教える。
こうした標準的な経済学の教えをもとに、国土交通省は、東京近郊から首都圏への鉄道乗り入れに伴う電車の遅れ対策の一つとして、地下鉄の「引き込み線」に関する調査や情報提供などへソフト面の支援を行うための費用を2010年度予算の概算請求に計上したのである(8月27日読売新聞の夕刊)。さらに、国土交通省はそれらの可能性を調べたうえ、具体的な対応をするかどうかという決定を各鉄道会社に委ね、政府の対応はあくまでも鉄道会社の投資を促す方針であると強調している。
国土交通省の主張は予想される結果であるならば、最初からそうした調査を行わないで、別の方策を検討した方が国民の税金を無駄にならないと指摘したい。お役人は如何に自らの管轄において予算を多く取るかを考え、そのために経済学などの諸理論を用いて「科学的」に正当性を確保することが常である。その結果、無駄使いが増大し、そのツケを国民に回すこととなる。いつまでも国民の血税で財政赤字を埋めることになる。今回の国土交通省が取り組もうとする対策は典型的な税金の無駄使いである。
時差通勤による混雑緩和が一つの対応である。但し、これまでの時差通勤を利用者の自発な行動に委ねるというやり方ではなく、通勤時間にしたがって運賃の差別化(例えば、朝7~9時、夕方5~7時の間に運賃の5割増し)を図ると同時に、ラッシュ時の電車運転間隔を最低間隔5分間に規制し、それによって相互乗り入れの遅れを解消するというアプローチを取る。そうすれば、利用者の便益をマイナス外部性による社会コストと同じくすることによって問題が解決される。
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